「 シキが立つ 」
船は小波をかき分け、真夜中に沖に出る。
漁師さんが30人ほど乗り合わせた船が数隻。
船尾には、竹を組んだ松明(たいまつ)が燃え盛り
行き交う漁火(いさりび)に魚を寄せて漁をする。
これは津奈木の地域に伝わる、伝統的な漁法です。
巧みに六丁艪(ろ)を漕ぎ、
おおきな巻き網を使って狙うのは、
不知火海で肥えたイワシの大群。
目印は、魚のうごきに反応した
夜光虫が放つ青色の強い光り。
この現象を津奈木の漁師さんは、
“シキが立つ”といいます。
夜の闇に包まれて、まばゆい光の海を漕ぐ。
かつての漁師さんだけが知る、特別な光景です。